どんなに寂しくても、ジョミーは「寂しい」とブルーへ伝えたことはなかった。
言えば困った顔をすることは明白だったし、「寂しい」からといってブルーにどうして欲しいわけでもない。
「ジョミー」
抱き合いながら傍で呼ばれることには、いつまで経っても慣れることなど出来ない。
身体のすべてを密着させれば、鼓動だけでなく吐息から声までもが身体中から伝わってくるのだ。それに慣れろというほうが無茶だ。
ブルーが瞳を閉じてジョミーの肩へ顔を埋めた。ちらりと横目で見えるその顔は幸せでいっぱいだ。
そんなブルーの顔を見るたび、ジョミーの顔も幸せで満たされる。
ブルーはあまり言葉をくれない。ただジョミーの身体が熱くなるような声で、顔で、ジョミーの名を呼んだ。
「ジョミー……」
ほら、まただ。
ドキドキと鼓動が速まる。さらに、それだけブルーのことを幸せに出来ているのだと思えば、身体中が熱くなった。こんな感覚はブルーに出会うまで、否、ブルーでなければ知らなかった。
ブルーのばか。
照れ隠しに目の前にあったブルーの耳たぶを食む。柔らかい感触は舌に近く、冷たい温度は舌とはまったく違った。
「大好きだよ、ブルー」
胸に浮き上がった言葉をそのまま囁く。本当に、本当に大好きなんだ。ブルー。
わずかに身体を話して笑いかける。向かい合ったブルーはなんとも言えない顔をしていた。今にも泣き出しそうな、それでいて幸せそうな。笑いたいの、泣きたいの、と問いかけたくなるような表情だ。
だが、それはすぐに見えなくなる。
「ジョミー……!」
咄嗟だったのか、ブルーの唇がずれてジョミーの唇の端に触れた。そして唇の淵をなぞり、溝から内側へと早急に侵入してこようとする。
「突然どうしたんだよ」
唇を離せずに思念波で伝えながら、ジョミーはブルーの舌を受け入れた。耳たぶとは違う熱い舌の感触を、ジョミーは自らのそれと絡めた。
「もっと、ジョミーが欲しいんだ」
送り返されてきた思念に心臓が跳ねる。
不意打ちだ。不意打ち過ぎるよ、ブルー。
ジョミーは耐え切れずに笑った。
こうやって時折わがままを言いいだすブルーの望みを叶えて、幸せな顔にしてやるのがジョミーは大好きだった。
「……欲しいなら、あげるよ。大好きだから」
ありがとう、そう言うようにぎゅっと抱きしめられる。
「寂しい」の代わりにジョミーはブルーを甘やかす。甘やかして幸せな顔にする。
ジョミーはブルーの身体を優しく柔らかく抱きしめ返した。