ACT.01

 ただ空を見つめてジョミーは待った。
 二度目の交信を終えて、いくらかの時が過ぎていた。
 また、何の反応もないのか……。
 希望に満ちた一度目の交信は何の反応もないままだった。そして、やはり無理だったのだと怒る長老たちを無視して、ゴリ押しのままジョミーは二度目の交信を行った。
 だが未だ反応はない。呼びかけたはずのステーションからの思念はぷっつりと途切れたままだ。
 やはり、と長老たちと同じ言葉が脳裏を掠めた。
 しかしジョミーは吐きかけた溜め息を飲み込んで、空を睨みつけた。
 いや、まだだ。まだ……!
 懸命に遠くの思念を探る。せめて困惑した思念だけでも掴めたなら。ジョミーは祈るような気持ちで思念の糸を探った。
 誰のものともわからないほど絡み合っていたはずの大勢の思念、ぷっつりと途切れた場所を何度もなんどもジョミーは探る。
 その先にゆるりと触れた感触があった。同時に途切れとぎれの声が届く。

「……こう……らへ……」

 切れる。
 瞬間的に察知したジョミーはその糸が切れることも考えずに思い切りその思念を引き寄せた。

「こい!」

 呼びかける声に驚き、背後にいたフィシスがジョミーへと駆け寄る。

「ジョミー……!」

 だがフィシスの次の言葉は続かなかった。
 フィシスの足元には仰向けに倒れたジョミー、そして重なるようにどこからか現れた少年。
 背を向けたまま動かない少年はわからない。だがジョミーもまた瞳を開かない。フィシスは恐るおそる二人へ手を伸ばした。

「ジョ、ミー……」

 ジョミーの額へと手を触れれば、その思念の乱れがフィシスを弾き返す。
 それでもなお触れ続ければビリビリと身体が痺れを訴えた。

「ジョミー!」

 名を呼んでも反応はない。
 なんとか、思念を落ち着かせなければ。
 フィシスは痺れに耐えながらアルフレートを呼んだ。

written by ヤマヤコウコ